Work技術者が語る
トキコの技術

ガソリンから水素まで、エネルギー供給のインフラを支えるために、
トキコの技術者たちはさまざまなテーマに挑んでいます。

Presentation 01

水素の質量を計測する
高精度な
コリオリ式流量計を開発

T.M.

設計開発本部 インフラ・エンジニアリング設計部
2015年入社/工学研究科 機械工学専攻

質量を直接計測できるため誤差が少ない流量計

燃料電池自動車は、燃料電池が水素と空気中の酸素を化学反応させてつくった電気でモーターを回します。走行時に水しか排出しないため、究極のクリーンカーとして注目されています。燃料の水素は水素ステーションで充填しますが、ガソリンと同様に水素ガスがどれだけ車に入ったかを測る流量計が必要です。ただ水素ガスは体積ではなく質量によって計測するため、ガソリンとは違って質量流量計が必要で、現在の水素ディスペンサーにはコリオリ式流量計が用いられています。コリオリ式流量計のメリットは、他の流量計とは異なり、補正等をせずに質量を直接計測することができるため、補正による誤差が生じないという点にあります。私たちはこのコリオリ式流量計を独自に開発してきました。

1秒の1億分の1まで計測できる技術を確立

コリオリ式流量計は、「コリオリ力」を利用して、一定の振動で揺れている2本のチューブに水素ガスを流し、2本の振動のズレ(位相差)を測ることで水素ガスの質量を計測します。流量が小さいほどズレは小さくなるため、どこまで小さなズレを計測できるかで精度が決まります。私たちはこの精度にとにかくこだわり、極限レベルにまで挑戦、2本のチューブによる振動のズレ、時間にすると約14ps(ps=1秒の1億分の1)まで計測できるコリオリ式流量計の開発に成功しました。この技術は業界でも数社しか実現できない程のレベルなんですよ。そしてこの実現には、たとえばチューブの形状一つをとっても、当社独自のアイデアとノウハウが詰まっています。正確で、外部からのノイズ成分に強く、しかも製造しやすいシンプルな形状など。細部にまでこだわる私たちの商品開発への想いの結晶なんです。


TOKICO KEYWORD

【コリオリ力】

お湯を張った浴槽の栓を抜くと、お湯は渦を巻いて排水口から抜けていきます。渦を巻くのはコリオリ力が働いているから。地球の自転によって発生する慣性力(見かけの力)です。コリオリ力は流体の質量と速度に比例し、流れに対して作用するため、流量計のパイプのズレ幅を測れば質量流量が計測できます。

コリオリ式流量計

Presentation 02

水素ステーションという
新しいインフラを
支える製品

Y.M.

設計開発本部 インフラ・エンジニアリング設計部
2008年入社/理工学部 物理学科卒

70MPaの水素ガスを燃料電池自動車へ安全に充填する

燃料電池自動車の燃料は水素ガスですが、一度の充填でそれなりの距離を走行するためには高圧で圧縮する必要があります。その圧力は70MPa。これは1㎠に700kg(軽自動車くらいの重量)の力がかかっている状態ですから、もし機器が破損すれば人命に関わります。しかも水素ガスは圧縮しても拡散しても温度が上昇する特異な性質をもち、分子サイズが小さいため漏洩しやすいなど、取扱いが非常に難しい物質です。ですが、私たちはこれまでに培った技術やノウハウを活用し、また耐久実験を繰り返し行うなど、さまざまな苦労の末に70MPaの水素ガスを燃料電池自動車へ安全に充填できる水素ディスペンサーの開発に成功。すでに水素ステーションでも利用されています。基礎的な技術が確立されたガソリン給油機とは違って、水素ディスペンサーはまだまだこれから技術進化していく次世代のディスペンサーなんです。

技術の進化は日進月歩、前例のないテーマに挑む

燃料電池自動車の普及には水素ステーションの増設が不可欠で、そのためには設置コストの低減が大きな課題です。水素ディスペンサーの開発も、安全性や高精度を担保しながらコストダウンを実現することが大きなテーマになってきました。さまざまな企業と連携した開発が進んでいますが、技術の進化はまさに日進月歩で、たとえば1年の間にデザインも構造もどんどん変わっていきます。私たちはその流れに遅れず、業界をリードする意気込みで開発に取り組んでいます。さらに水素ステーションのセルフ化も始まっているため、誰でも安全かつ、簡単に水素を充填できるディスペンサーが求められています。前例のないことに挑戦する。そして、私たちが水素ディスペンサーの未来を創る。そこに大きな魅力がある仕事です。


TOKICO KEYWORD

【水素ディスペンサー】

ガソリン自動車にガソリンを給油するように、燃料電池自動車に水素を充填するのが水素ディスペンサー。現在、ガソリンスタンド併設型水素ステーションや、天然ガススタンド併設型水素ステーションなど、マルチエネルギーステーションの建設が始まっており、トキコの水素ディスペンサーは50%近いシェアを獲得しています。

水素ディスペンサー

Presentation 03

1,000円分のガソリンを
過不足なく
正確に給油する技術

N.T.

設計開発本部 エネルギーステーション設計部
2010年入社/工学研究科 精密システム工学専攻

「当たり前」を当たり前に支える技術

「1,000円払ったら、1,000円分のガソリンが車に給油される」。このことを疑う方は少ないと思います。ガソリンは危険物ですが、ガソリンスタンドで給油する際に不安を感じることもあまりないはずです。誰もが疑わず、不安も感じず、当たり前にガソリンスタンドを利用しています。その「当たり前」を支えているのが、私たちが長年培ってきた「流す・測る」技術であり、危険物を取り扱う技術です。誰も「当たり前」のことで困りはしないので注目されることはありませんが、この両立はとても難しいことなんですよ。注目されない=優れた品質をスタンダード化している私たちの技術こそ、凄さであり、誇りなんです。その結果、私たちのガソリン計量機はアジアを中心に、世界各国で幅広く利用されています。

これからは災害対応が大きなテーマに

私はこれまでに都市ガス用流量計、コリオリ式流量計、水素ディスペンサーなどの開発を担当し、今はガソリン計量機の開発に携わっています。さまざまな分野で技術やノウハウを習得し、その経験を今後に活かして、未来に向けた開発にチャレンジしたいと考えています。たとえば今取り組んでいるテーマのひとつが、ゲリラ豪雨など都市型の水害に強いガソリン計量機の開発です。これまでの計量機は浸水が想定されていないため、少し水に浸かっただけで機械が故障し部品交換が必要になるといった問題があります。今後は社会への貢献という意味で、さまざまな災害に備えたエネルギーの安定供給が大きな課題になってくるでしょう。


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【災害対応型給油所】

大規模な災害時では、ガソリンスタンドが停止して自家用車はもちろん緊急車両にも給油できない事態が起きることがあります。それを受けて経済産業省資源エネルギー庁では災害時対応型給油所の普及に取り組んでいます。太陽光発電設備、内燃機関発電設備、貯水設備等を備えているのが特徴で、そこでは災害に強い仕様のガソリン計量機が求められています。


Presentation 04

業界初、
セルフスタンドの
「万が一」を救う技術開発

Y.H.

設計開発本部 システムソリューション設計部
2008年入社/工学部 電気電子工学科卒

セルフスタンドでの安全な給油管理をサポート

最近ではドライバー自身がガソリンを給油するセルフサービスのスタンドが増えてきました。そのため給油事故が起きないよう、セルフスタンドには従業員による給油状況の監視が義務づけられています。その監視システムがSSC(セルフサービスコントローラー)で、お客様がノズルを挿入したことを確認してから給油許可を出すことができるほか、計量機の使用状況や給油状況なども確認できるようになっています。このSSCの本体は事務所内に設置されており、お客様がいる間は事務所を離れられないという問題がありました。そこで私たちはSSC親機と連動し、事務所外でも給油管理が安全に行える、持ち運び可能な『ハンディSSC』を開発し好評をいただいています。

『ハンディSSC』を活用したリカバリーユニットの開発

SSCに万が一のトラブルが発生した場合、スムーズに業務を再開することが可能なSSCリカバリーユニット『ハンディSSC+R』は、業界で初めての製品化でした。このユニットの優れた点は、SSCの起動時にリカバリーが誤作動しないための安全機能をいくつも搭載していることです。また、このユニット自体には画面がなく、『ハンディSSC』を差し込むことで初めて機能する仕様にした点も、大変ユニークだと高い評価をいただきました。

全社で乗り越えた困難なプロジェクト

しかし、この開発はとにかく困難の連続でした。まずお客様からお声がけをいただいてから製品化するまでに、かなりタイトなスケジュールが設定されており、システム設計者を総動員しなければならないプロジェクトでした。また危険物に関わる製品のため、製品化には認証機関からの許諾が必要になります。通常の申請方法では到底間に合わない状況でしたが、関係各所へ機能の説明を何度も行うなどの働きかけを行いました。そうしたスピード感が求められる状況のなか、各部署の協力もあって、なんとかスケジュール内に製品を開発。無事やり遂げることができました。


TOKICO KEYWORD

【SSC(セルフサービスコントローラー)】

セルフスタンドでの給油は、従業員が給油者の動作を見守り、安全が確認できてから給油許可や給油停止の指示を出す仕組みで、万が一、SSCが止まってしまうと営業自体を止める必要があるほど大切な機器です。セルフ本体と連動してステーション内のどこからでも操作できるのが『ハンディSSC』。トキコの「ハンデイSSC+R」は、その『ハンディSSC』にリカバリーシステムをプラスしたものです。

ハンディSSC+R